特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(千葉県松戸市、代表:中村雄一)が2026年9月に訪問したウクライナ西部リビウの武道館学校で、10月15日、日本の熊本県と2016年・2026年の熊本地震からの復興をテーマにした特別授業が実施されました。授業では、なかよし学園が制作した熊本紹介スライドを活用し、子どもたちが熊本県の人気キャラクター「くまモン」をモチーフにしたミニ四駆を組み立てました。さらに生徒たちは、遠く離れた熊本の人々へ向けたメッセージ動画を自ら撮影。日本から届いた教材が、戦争の続くウクライナの教室で新しい学びを生み、今度はウクライナから日本へと思いが届けられようとしています。

ウクライナ・リビウ武道館学校で行われた「KUMAMOTO」の授業
今回の授業を実施したのは、9月の訪問以来交流を続けてきた武道館学校の教員と生徒たちです。なかよし学園のメンバーが帰国した後も、現地の先生が教材を使って授業を行い、子どもたちが自分たちの手で活動を発展させています。戦争の中でも学ぶことを諦めないウクライナの子どもたちと、震災から復興を続ける日本の熊本。異なる困難に向き合う二つの地域が、互いの経験を学び、励まし合う新しい国際教育交流が始まりました。
■熊本からウクライナへ。小さなミニ四駆に託した「もう一度走り出せる」という願い
2016年4月、熊本を襲った大地震は、人々の暮らしを一変させました。住宅や道路が損壊し、地域の象徴である熊本城も大きな被害を受けました。あれから10年。復興は着実に進められてきましたが、熊本城の石垣など、現在も修復が続いている場所があります。
なかよし学園が今回のウクライナ授業に取り入れたのは、この熊本の「復興の経験」でした。くまモンミニ四駆を単なる日本のおもちゃとして届けるのではなく、困難の中でも再び立ち上がろうとする人々の姿を伝える教材として活用しました。
熊本の教員の協力を得て制作した全16ページの教材「くまモンミニ四駆にこめたメッセージ」では、熊本の地理や自然、阿蘇山、熊本城、くまモンの誕生などを紹介するとともに、2016年熊本地震による被害と復興の歩みを取り上げています。教材に込められた3つのキーワードは「元気(ENERGY)」「友情(FRIENDSHIP)」「復興(RECOVERY)」。その中心にあるのは、苦しい状況に置かれても人はもう一度歩き出せるという希望です。

熊本紹介スライド
熊本紹介スライド
熊本紹介スライド
熊本紹介スライド
災害と戦争は、その原因も社会的背景も異なります。しかし、突然日常を奪われること、大切な場所が傷つくこと、そして失われた生活を取り戻そうとする人々の努力には、国境を越えて共感できるものがあります。熊本が歩んできた復興の道のりを知ることは、ウクライナの子どもたちにとって、日本という遠い国の歴史を学ぶだけでなく、自分たちの未来について考える機会にもなります。
「つらくても、もう一度走り出せる」「日本とウクライナは友だち」。そんな思いを込めて、熊本からウクライナへ、小さなミニ四駆が届けられました。

熊本紹介スライド最終ページには、日本とウクライナの友情メッセージが記された。
■日本から先生がいなくなっても、授業は続いている。リビウで生まれた新しい学び
10月15日、リビウの武道館学校では、カテリーナ・フィレンコ先生らによって熊本を紹介する授業が行われました。スクリーンには日本地図やくまモン、ミニ四駆の写真が映し出され、生徒たちは日本の熊本県について学びました。

ウクライナ武道館学校で行われた「KUMAMOTO」の授業
机の上には、日本から届いた小さなレーシングカー。子どもたちはミニ四駆を手に取り、部品の構造を確かめたり、友達と相談したりしながら、組み立てを進めました。赤いパーカーを着た男子生徒が車体をじっと見つめる姿や、仲間同士で模型を囲む光景が、現地から送られてきた写真に収められています。

くまモンミニ四駆を作成する生徒たち
くまモンミニ四駆を作成する生徒たち
授業後、カテリーナ先生からなかよし学園へ、最初の成果を伝える連絡が届きました。武道館学校に通う兄弟2人がくまモンミニ四駆を組み立て、その様子と熊本の人々に向けたメッセージを、自分たちで動画撮影したという報告でした。さらにカテリーナ先生自身も生徒たちと熊本について話し始めており、今後はより多くの写真や動画、子どもたちからのメッセージを集め、一つの映像にまとめたいと考えています。
今回の活動で注目すべきなのは、日本のNGOが現地で授業を実施したことではありません。日本のNGOが帰国した後も、現地の教員と子どもたちが自ら教材を活用し、学びを継続していることです。
なかよし学園は2026年9月、武道館学校で日本語教育や防災教育、未来のまちづくりなどの授業を実施しました。その際に生まれた現地教員との協力関係が、一度限りの交流ではなく、学校の日常的な教育活動へとつながっています。

武道館学校でおこなわれKUMAMOTOの授業
武道館学校でおこなわれKUMAMOTOの授業
武道館学校でおこなわれKUMAMOTOの授業
海外支援では、支援者が現地を離れると活動も止まってしまうことがあります。しかし今回、リビウの教室では、なかよし学園がいなくても学びが続いています。現地の先生が自分たちの学校の授業として教材を使い、子どもたちが自ら表現し、次の交流を生み出している。その姿は、持続可能な教育協力と平和構築の可能性を具体的に示しています。
■戦争は終わっていない。それでも、子どもたちは未来を学び続けている
2022年2月のロシアによる全面侵攻から4年以上が経過したウクライナでは、現在も各地で攻撃が続き、多くの市民が命の危険と隣り合わせの生活を強いられています。比較的前線から離れた西部リビウも安全な場所ではなく、ミサイルやドローンによる攻撃の脅威にさらされています。
2026年9月、なかよし学園の中村雄一代表と中村里英事務局長がウクライナを訪問した際も、首都キーウでは空襲警報が鳴り響き、授業を行った学校の近くにドローンが着弾するなど、戦争の現実を目の当たりにしました。地下シェルターで学ぶ子どもたち、攻撃に備えながら学校を運営する教員、電力や交通など生活基盤への不安が続く市民たち。現地で出会った人々が懸命に守ろうとしていたのは、戦争以前には当たり前だった「日常」でした。

9月4日。活動中に着弾しらロシアからのミサイル。
しかし、今回ウクライナから届いた写真には、悲惨な戦争の風景とは異なる、もう一つの現実が写っています。
教室で先生の話を聞く子どもたち。友達と一緒に一つのものをつくろうとする姿。遠い日本に関心を持ち、自分たちからメッセージを届けようとする生徒たち。

くまモンミニ四駆がウクライナの生徒たちに笑顔をつくった。
戦争の中でも、子どもたちには学ぶ権利があります。自分の国のことだけでなく世界について知り、好きなことに夢中になり、誰かと協力し、新しい未来を思い描く権利があります。
なかよし学園がウクライナで続ける活動は、戦争そのものを止めることができるものではありません。しかし、戦争によって人と人とのつながりが断たれ、子どもたちの可能性が狭められていくことに対して、教育を通じた別の選択肢をつくることはできます。
日本の教材がウクライナの教室で使われ、現地の子どもたちが日本の人々を思い、メッセージを発信する。その小さな営みの積み重ねこそが、なかよし学園の進める平和構築です。

なかよし学園が武道館学校で行った「なかよし鉄道・未来のまちづくり」授業。
■「助けてもらう国」から「誰かを励ます国」へ。ウクライナの子どもたちが熊本を思う
今回の活動は、単に日本とウクライナの友好を深める国際交流ではありません。なかよし学園が長年取り組んできた「支援される側から、支援する側へ」という教育モデルを、戦時下の学校で実践する試みでもあります。
一般的な国際協力では、日本から物資や教材を届け、現地の子どもたちがそれを受け取る形になりがちです。その関係では、日本が「支援する側」、ウクライナが「支援される側」という立場が固定されてしまいます。
しかし、なかよし学園が目指すのは、そのような一方向の関係ではありません。
熊本の人々が震災からの復興の経験をウクライナへ伝えることで、ウクライナの子どもたちは日本のことを学びます。そして今度は、ウクライナの子どもたちが熊本の人々を励まし、自分たちの経験や文化、暮らしを日本へ伝えます。
戦争の中にいるからといって、ウクライナの子どもたちが誰かを支える力を持っていないわけではありません。むしろ困難の中で学び続ける彼らだからこそ、遠く離れた日本の子どもたちに伝えられることがあります。
熊本は震災からの復興を通じて「再び立ち上がる力」を伝え、ウクライナは戦争の中でも学ぶことを諦めない姿を通じて「未来を信じる力」を伝える。それぞれの経験が、相手の学びとなり、励ましとなっていきます。
「支援される側」であった子どもたちが、今度は誰かに希望を届ける存在になる。この役割の変化こそ、なかよし学園が提唱するCoRe Loop(学びと社会貢献の循環)の重要な特徴です。

熊本が制作したスライドでウクライナの生徒たちが熊本の地震について学ぶ。
■次はウクライナから熊本へ。子どもたちがつくる「教え合い・学び合い」の授業
武道館学校では現在、ウクライナの文化や地域、学校生活などを日本の子どもたちに紹介する教材づくりに向けた準備も進めています。完成したスライドや子どもたちのメッセージは、なかよし学園を通じて熊本県内の学校へ届け、実際の授業で活用してもらう予定です。

熊本の被災地に向けてメッセージを送るウクライナの生徒たち。
今回、ウクライナの子どもたちは熊本について学びました。今度は熊本の子どもたちが、ウクライナについて学ぶ番です。
熊本の子どもたちにとって、ウクライナはニュースの中で戦争が起きている遠い国かもしれません。しかし、そこには自分たちと同じように学校へ通い、友達と話し、好きなことに夢中になり、将来の夢を持つ子どもたちがいます。
教科書や報道を通して知るウクライナと、同世代の子どもたちが自分の言葉で紹介するウクライナでは、受け取るものが違います。遠く離れた国の子どもたちが、自分たちのために教材をつくり、メッセージを送ってくれる。その事実は、世界の出来事を「自分とは関係のない話」から「自分とつながっている人の話」へと変える可能性を持っています。
なかよし学園は、熊本の子どもたちからもウクライナへの返事や学習成果を届けることで、学びの往還をさらに発展させたいと考えています。熊本からウクライナへ、ウクライナから熊本へ。教材を受け取った子どもが、次は誰かの先生になる。教えることで学び、学ぶことで相手を理解する。その積み重ねから、国境を越えた持続的な教育協力の仕組みを育てていきます。

ウクライナ・リヴィウの生徒が作成したリヴィウ紹介動画。熊本や山形の生徒に向けて紹介動画を作成している。
■国際的な評価の先にあるもの。なかよし学園が大切にするのは、今日も続く世界の教室
なかよし学園プロジェクトは、アジア、アフリカ、ヨーロッパの世界11カ国で、教育を通じた平和構築活動を続けています。カンボジアでは地雷被害のある地域での教育、ルワンダでは虐殺の歴史を乗り越える平和教育、コンゴ民主共和国では紛争や自然災害の影響を受けた地域への教育支援、そしてウクライナでは戦時下の子どもたちと未来を考える授業を実施してきました。

世界中で活動するなかよし学園
世界中で活動するなかよし学園
世界中で活動するなかよし学園
世界中で活動するなかよし学園
その活動の中で一貫して大切にしてきたのは、現地の子どもたちや教員を、一方的に支援を受ける存在として扱わないことです。現地の文化や知識、経験を尊重し、そこにある可能性を生かしながら、ともに学びをつくる。こうした実践は、地域の主体性を重視しながら平和を築いていくAdaptive Peacebuilding(適応的平和構築)の考え方とも重なります。
なかよし学園の教育モデル「CoRe Loop」は、UNESCO等による国際的な教育事例にも取り上げられ、2026年には「EXPO FUTURES AWARD」の「平和と人権」部門グランプリを受賞するなど、社会的な評価を受けています。
EXPO FUTURES AWARDの「平和と人権」部門グランプリを受賞
https://efa.forest-of-resonance.jp/img/efa2026-2.pdf
しかし、これらの評価は活動の到達点ではありません。世界の現場で子どもたちと向き合い、学校や教員との信頼関係を築き、教材を届け、授業を行い、帰国後も連絡を取り合いながら次の学びへとつなげる。その地道な営みが、なかよし学園の活動の中心にあります。
今回、リビウから届いた写真も、そうした継続的な取り組みの一つです。現地の先生が熊本の教材を使い、生徒たちがミニ四駆を組み立て、日本へのメッセージを準備している。特別な式典でも、大規模な国際会議でもない、戦時下の学校で行われた一つの授業です。
そこには、支援者が訪問した時だけ生まれる笑顔ではなく、支援者が帰った後も続いていく学びがあります。
世界の平和構築は、大きな合意や制度によって進められる一方で、人と人との信頼、互いへの理解、日々の教育活動によっても支えられています。なかよし学園は、そうした現場での実践をこれからも積み重ねていきます。

Adaptive Peacebuilding(適応的平和構築)という新しい形の国際協力が始まっている
■なかよし学園プロジェクト代表・中村雄一 コメント
今回、ウクライナから届いた写真を見て、本当にうれしく思いました。私たちが現地で授業を行ったのは9月です。もう日本へ帰ってきています。それでもカテリーナ先生が熊本の教材を使って授業を続け、子どもたちがくまモンのミニ四駆を組み立て、熊本のみなさんへのメッセージまでつくってくれた。私たちがいなくても、学びが続いているんです。
私が熊本の復興をウクライナの子どもたちに伝えたかったのは、日本にも大きな困難と向き合いながら、前へ進んできた人たちがいるからです。地震と戦争は違います。それでも、ある日突然大切な日常を失い、それでも明日を生きていこうとする人々の思いには、通じ合うものがあると思っています。
今回、何より感動したのは、ウクライナの子どもたちが熊本に向けてメッセージを送ってくれたことです。今、世界中から支援を受けているウクライナの子どもたちが、遠く離れた熊本の復興を思い、誰かを励まそうとしている。これは、支援する側とされる側という関係を超えた、本当の意味での学び合いだと思います。
平和構築というと、どうしても国際会議や大きな政策の話になりがちです。もちろんそれも大切です。でも、私たちが世界各地で出会ってきたのは、目の前の子どもたちの笑顔を守るために、毎日懸命に働いている先生たちです。戦争が続くウクライナでも、子どもたちの未来を諦めずに授業を続ける先生たちがいます。私は、そういう人たちと一緒に平和をつくっていきたいんです。
なかよし学園の活動をさまざまな形で評価していただけることはありがたいですが、私たちがやるべきことは何も変わりません。明日も世界のどこかの教室で、誰かの可能性が広がるように活動を続ける。それだけです。
今度は、ウクライナの子どもたちがつくった教材を熊本へ届けます。戦争の中で学び続ける子どもたちの思いが、熊本の子どもたちの心に届き、また新しい学びが生まれることを願っています。
小さなミニ四駆から始まった交流ですが、私はここに大きな平和の可能性を感じています。世界を一度に変えることはできなくても、目の前の一人と一人がつながることはできる。そのつながりを、これからも世界中につくり続けたいと思います。」

リヴィウ武道館学校の生徒一人一人にサインを書く中村雄一代表
■今後の展開――世界の子どもたちが、互いの未来を支え合う教育へ
なかよし学園は今後も、武道館学校との教育連携を継続し、子どもたちが制作するウクライナ紹介スライドやメッセージ動画を日本の学校へ届けていきます。熊本県内の学校での授業活用を進めるとともに、そこで生まれた学習成果を再びウクライナへ還すことで、両国の子どもたちが互いに教え、学び、支え合う教育交流を発展させます。
また、今回の実践を他の活動国や国内の連携校にも広げ、それぞれの地域が持つ経験や文化、課題を教材として共有し、子どもたち自身が国境を越えて学びを生み出していく仕組みの構築を目指します。現在山形県遊佐中学校でも郷土料理の「芋煮」を伝えようとプロジェクトが始まっています。

芋煮のプレゼンをする生徒たち
遊佐をプレゼンする生徒たち
熊本には震災を乗り越えようとする人々がいます。ウクライナには戦争の中でも学ぶことを諦めない子どもたちがいます。困難の形が違っても、互いの存在を知り、励まし合うことはできます。
日本からウクライナへ届けられた小さなミニ四駆は、今度はウクライナから日本へ、子どもたちの思いを運ぼうとしています。その交流が続く限り、二つの地域の学びは一方通行では終わりません。
平和は、誰かから与えられるものではなく、人と人とが関係を築く中で少しずつ育てていくもの。なかよし学園は、これからも世界各地の教室で、その一歩を積み重ねていきます。

山形県遊佐中学校で講演を行う中村雄一代表
■関連情報
ウクライナ・リビウ武道館学校における「教え合い・学び合い」の取り組み
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000160.000166170.html
【武道館学校公式サイト】なかよし学園との教育交流
https://budokan.lviv.ua/nakayoshi-gakuen/
【なかよし学園プロジェクト】
https://nakayoshigakuen.org
■本件に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
E-mail:peace.office@nakayoshigakuen.org
写真素材・取材対応が可能です。
掲載時の写真クレジット:(C)なかよし学園プロジェクト