
2025年11月21日より、新宿・歌舞伎町のアートスペース「デカメロン」にて、三好彼流(みよし・かる)による個展〈Giant Kickoff〉を開催いたします。
三好は「身体の拡張」や、「身体を他者と共有すること」といった概念に向き合い、その思考をパフォーマンスやソフトスカルプチャーとして物理空間に具現化するプロセスを通じて、表現活動を展開してきました。
リアルタイムのパフォーマンスを主軸として発表してきた三好にとって、展覧会形式での個展は本展が初の試みとなります。
本展では2022年より、三好が構想してきた作品シリーズの中から、現時点での到達点とも言える《大蹴球》と、その制作過程で視覚情報として現れた多様な形態の作品群が展示されます。
巨大彫刻と複数の身体がつくる協働的パフォーマンス《大蹴球》
《大蹴球》は三好彼流による全長25mの巨大なサッカープレイヤーが試合を繰り広げるパフォーマンス作品です。巨大な人型のインフレータブル彫刻の内部に5人のパフォーマーが入り、各自が胴体や四肢の機能を担いながら連動して動いていきます。そしてパフォーマーが入った2.8mの球体を蹴り、ゴールにシュートすることを目標として、攻防を繰り広げます。
初見ではそのビジュアルインパクトとユーモアに目を奪われますが、観戦を続けるうちに、シンプルながら精巧なパフォーマンスから多様な視点が立ち上がってきます。時空スケールの大きなズレにより、見慣れたはずのサッカーが大自然の現象のように変容していく静謐さ、脳からの電気信号や筋肉のつながりが個々の身体や意思を超えて拡張されていく様子が感じられます。そして個人間のネットワークの中で主体が流動し変化していく過程を可視化し、物理世界の普遍性と人間の生々しさを鋭く照らし出します。
展覧会から日常へと拡張する《大蹴球》の体験
《大蹴球》の試合は、本展会場であるデカメロンから程近い歌舞伎町シネシティ広場でも2025年11月に行われ、その記録映像もあわせて展示されます。本展を起点に日常へと広がる、ままならない関係性の妙をご体感ください。
(文・磯村暖)
《大蹴球》に関して、作者の言葉
自分の服の中に他者の身体を取り込むことで、どこまでが自らの身体なのかを曖昧にさせる。作品を通して、身体そのものの仕組みに懐疑的に向き合い、個の身体的な境界線を問い直してきた。今回はこれまでの制作を引き継ぎつつ、より一層 “演技”を排除した状態で身体と向き合わざるを得ない状況を生み出す。自分は動いているのか動かされているのか。今、何のために歩いているのかという問いに、ボールに閉じ込められた主体と、協力し合わなければ動くことができない巨人を用いて思考する。巨大な手や足、ボールの中に入る人は自らの視覚、聴覚、触覚などの感覚を用いて身体を動かし、機械的ではない五感を用いたコミュニケーションがそこには創出される。
アーティストプロフィール

三好彼流(みよし・かる)アーティスト。2001年生まれ。東京を拠点にパフォーマンス、絵画、映像、インスタレーションなどを用いて制作。服が身体に与える影響に興味があり一部を巨大化させた服を用い、そこに他者の体を取り込んでパフォーマンスを行う。
主な展示に「Polyparallax, BENTEN 2025 (2025/ 王城ビル, 東京都)、「科学と芸術の丘」(2025/ 松戸中央公園, 千葉県)、「大蹴球」(2025/ グリーンヒルズ緑山フットサルパーク, 東京都)、「場の脂肪」(2024/Token Art Center, 東京都)、「地下に繋がってるんや」(2024/ same galery, 東京都)。
主な参加した舞台に「Stillive 2024:Kinetic Net」(2024/ CCO, 大阪府)、山内翔太「汗と油のチーズのように酸っぱいジュース」(2023/ KYOTO EXPERIMENT, 京都府)、川口隆夫「バラ色ダンス純粋性愛批判」(2023/ 両国シアターX, 東京都 /ロームシアター京都, 京都府/ 那覇文化芸術劇場なはーと, 沖縄県)、「デッカイダンス」(2022/RforD,MATTER, 東京都)。






