岡山大学と千葉県がんセンター、千葉大学、山梨大学、国立がん研究センター、近畿大学、埼玉医科大学、信州大学、東京大学との共同研究成果プレスリリースです。
2025(令和7)年 1月 27日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
<発表のポイント>
- がん免疫療法は多くの種類のがんで使われている治療法ですが、効果が全くないこともあり、その理由はまだよくわかっていません。
- ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作る役割を持つ小さな器官ですが、がん細胞ではこのミトコンドリアがよく異常を起こすことが知られています。
- 私たちは、そのような異常なミトコンドリアが周りの免疫細胞に移っていき、正常な免疫細胞の働きを邪魔し、その結果、がん免疫療法の効果が弱まることを発見しました。
◆概 要
2018年にノーベル賞を受賞した「免疫チェックポイント阻害薬」などのがん免疫療法は、新しいがん治療の一つとして注目されています。この治療では、薬ががん細胞の周りにいる免疫細胞に働きかけて、それによって活性化した免疫細胞ががん細胞を攻撃し、効果を発揮します。非常に良い効果が出る場合もありますが、半分以上のケースでは効果がなく、その理由はまだよくわかっていません。
ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作る小さな器官で、独自のDNA(mtDNA)を持っています。がん細胞では、このmtDNAに変異などの異常があり、また、がん細胞の周りの免疫細胞にもミトコンドリアの異常があることが知られています。
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)学術研究院医歯薬学域(医)の冨樫庸介教授による研究チームは、千葉県がんセンターをはじめ、千葉大学、山梨大学、国立がん研究センター、近畿大学、埼玉医科大学、信州大学、東京大学の研究チームとの共同研究により、がん細胞の周りにいる免疫細胞にもがん細胞と同じmtDNA変異があることを発見し、それががん細胞からミトコンドリアが免疫細胞に移ってきた結果であることを、世界で初めて明らかにしました。
この異常なミトコンドリアが原因で免疫細胞の働きが悪くなり、そのためにがん免疫療法が効きにくくなることも証明しました。
本研究結果は、2025年1月23日(木)午前1時(日本時間)に「Nature」誌に掲載されました。
この発見は、がん細胞が生き残るための新しい仕組みを解明したもので、今後は新しい治療法の開発や、がん免疫療法が効くかどうかを見分けるマーカーとして活用できる可能性があります。
◆冨樫庸介教授からのひとこと
呼吸器内科医として薬が非常によく効く人もいれば、まったく効かない人もいて、その違いに疑問を感じたのが私の研究の原点です。本研究は2020年頃に着想し、最初はミトコンドリアについて素人同然でしたが、大学院生含めて色々な方々にご協力いただきながら結果をまとめ、無事公表にまでこぎつけました。研究費を含めてサポートいただいた多くの方々にこの場を借りて深く御礼申し上げます。
◆論文情報
論 文 名:Immune evasion through mitochondrial transfer in the tumour microenvironment
掲 載 紙:Nature
著 者:Hideki Ikeda, Katsushige Kawase, Tatsuya Nishi, Tomofumi Watanabe, Keizo Takenaga, Takashi Inozume, Takamasa Ishino, Sho Aki, Jason Lin, Shusuke Kawashima, Joji Nagasaki, Youki Ueda, Shinichiro Suzuki, Hideki Makinoshima, Makiko Itami, Yuki Nakamura, Yasutoshi Tatsumi, Yusuke Suenaga, Takao Morinaga, Akiko Honobe-Tabuchi, Takehiro Ohnuma, Tatsuyoshi Kawamura, Yoshiyasu Umeda, Yasuhiro Nakamura, Yukiko Kiniwa, Eiki Ichihara, Hidetoshi Hayashi, Jun-ichiro Ikeda, Toyoyuki Hanazawa, Shinichi Toyooka, Hiroyuki Mano, Takuji Suzuki, Tsuyoshi Osawa, Masahito Kawazu, Yosuke Togashi
D O I:10.1038/s41586-024-08439-0
U R L:https://www.nature.com/articles/s41586-024-08439-0
◆研究資金
本研究は、日本学術振興会(JSPS)海外連携研究 JP 23KK0149 基盤B JP 24K02549 挑戦的萌芽 JP 22K19459・JP 24K22071
AMED次世代がん医療加速化研究事業 JP 21cm0106383, JP 23ama221325, JP 23ama221427
革新的がん医療実用化研究事業 JP 22ck0106723, JP 22ck0106775
革新的先端研究開発支援事業CREST JP 22gm1810002
肝炎等克服実用化研究事業 JP 24fk0210518
科学技術振興機構(JST) No. JPMJFR2049, ACT-X no. JPMJAX2321
国立がん研究センター研究開発費No. 2023-A-05
千葉県研究助成金、内藤記念科学振興財団、持田記念医学薬学振興財団、MSD生命科学財団、GSKジャパン研究助成、高松宮妃癌研究基金、興和生命科学振興財団、加藤記念財団、稲盛財団、アステラス病態代謝研究会、鈴木謙三記念医科学応用財団、SGH財団、住友財団、テルモ生命科学振興財団、中外創薬科学財団、武田科学振興財団研究助成金、小野薬品がん・免疫・神経研究財団、小林がん学術振興会の支援を受けて実施しました。
また、本論文のオープンアクセス化は、文部科学省「オープンアクセス加速化事業」の取り組みの一環で実施している「インパクトの高い国際的な学術誌へのAPC支援」による支援を受けています。
◆詳しい研究内容について
がん細胞が自らの異常なミトコンドリアで免疫系を乗っ取り、生き残りをはかっている
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r6/press20250123-0.pdf
◆参 考
・岡山大学 学術研究院 医歯薬学域 腫瘍微小環境学分野
https://www.cc.okayama-u.ac.jp/tme/index.html
・岡山大学病院 血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科
http://ninai.med.okayama-u.ac.jp/
◆参考情報
・冨樫庸介教授(医)が第7回日本医療研究開発大賞「日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞」を受賞
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id13952.html
岡山大学鹿田キャンパス(岡山市北区)
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(医)腫瘍微小環境学分野 教授
岡山大学病院呼吸器・アレルギー内科 教授
冨樫庸介
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
TEL:086-235-7390
FAX:086-235-7392
https://www.cc.okayama-u.ac.jp/tme/index.html
http://ninai.med.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
岡山大学病院 新医療研究開発センター
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/
<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
TEL:086-235-7983
E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8745、086-251-8746
FAX:086-251-8748
E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://fspp.kikibun.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://venture.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
岡山大学統合報告書2024:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002801.000072793.html
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2025年1月期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002800.000072793.html
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください
- 岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html